【年末年始休業日】12月28日〜1月4日迄
抗悪性腫瘍薬 分子標的治療薬(抗体)
トラスツズマブ trastuzumab
【組成】 | [妊B]【冷所保存】[生物由来品] |
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【剤形】 | 注射用:60mg,150mg(溶解液〔注射用水〕,希釈液〔生理食塩液〕付) |
【用量】 | 1日1回,初回4mg/kg,2回目以降2mg/kgを90分以上かけて1週間間隔で点滴静注.投与時は〔注射用水〕3mL(60mg製剤)又は7.2mL(150mg製剤)で21mg/mLの濃度とし,必要量を〔生理食塩液〕250mLに希釈し点滴静注 |
【特徴】 | オーファンドラッグ.抗ヒト上皮増殖因子受容体2型(HER2)ヒト化モノクローナル抗体乳癌治療薬.HER2受容体をターゲットにした分子標的療法 |
【適応】 | HER2過剰発現が確認された転移性乳癌 |
【警告】 | 心不全などの重篤な心障害や重度のinfusion reaction(アナフィラキシー様症状,重度の肺障害等の副作用)から死亡例の報告.投与中は適宜心機能検査を行う.添付文書参照.特にアントラサイクリン系薬投与中又は前治療歴がある場合,胸部放射線照射中,心疾患既往,高血圧症は慎重投与 |
【薬物動態】 | (半減期)1mg/kg1.5時間点滴静注2.4日(8mg/kgでは5.5日) |
【フコイダンとの 相互作用】 | 無 |
【副作用】 | [重大]間質性肺炎・肺障害.腎障害.心障害.アナフィラキシー様症状.白血球減少,好中球減少,血小板減少,貧血.肝不全,黄疸,肝炎,肝障害.昏睡,脳血管障害,脳浮腫.敗血症[その他]無力症,頭痛,運動失調,不全麻痺.嘔気・嘔吐.高血圧.プロトロンビン減少.皮膚炎.発熱,悪寒,疼痛,疲労,異常感覚,めまい,不眠.下痢,腹痛,食欲不振,便秘,消化不良.血管拡張,頻脈.呼吸困難,鼻炎,咳増加,鼻出血.発疹,そう痒感,脱毛,爪疾患.胸痛,背部痛,末梢性浮腫.筋肉痛.関節痛.骨痛など |
分子標的治療薬という抗がん剤が出現したことで、がんの治療はこれまでとずいぶん変わってきました。
日本で初めて、乳がんに対する分子標的治療薬として認められたのが、ハーセプチンという抗がん剤です。この薬は、最初はHER2(ハーツー)と呼ばれるタンパク質が過剰に認められる転移性の乳がんでしか治療に使うことが出来ませんでした。しかしながら、時間が経つに連れて様々な臨床データが出そろってくると、乳がんの手術後に化学療法を行ったあと、ハーセプチンを投与することで再発の確率が下がることがわかったのです。
今では、術後にハーセプチンを使うことが認められており、多くの乳がんの患者さんがこの薬を使っています。
ハーセプチンは分子標的治療薬ですから、がん細胞を標的にして攻撃してくれます。HER2タンパクを狙い撃ちして、がん細胞が増えないようにしてくれるので効果もありますし、他の抗がん剤のような副作用が少ないことも特徴です。
有効率は30〜40%とされており、効果が認められている間は週に1回、コンスタントに点滴で投与することになります。何十年も継続することになることもあります。
ただ副作用が少ないとはいえ、普通の抗がん剤のように嘔吐や脱毛などはないものの、肺の炎症や心臓の機能低下などが起こることがあり、この薬を使っているうちは定期的な検査が必要になってきます。
あと、少し前から薬剤師の間で関心が高い話題は、このハーセプチンとエムタンシンという化学療法剤を結合させたカドサイラという薬が登場したことです。
この薬が使えるようになれば、ハーセプチンで救うことが出来なかった命を救える可能性はかなり高くなるはずです。
近い将来活躍してくれる抗がん剤であることは間違いありません。