【年末年始休業日】12月28日〜1月4日迄
抗悪性腫瘍薬 アルキル化薬(マスタード類)
メルファラン melphalan(L-PAM)
【組成】 | 【毒薬】[妊D] |
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【剤形】 | 錠:2mg 静注用:50mg(〔添付溶解液〕付) |
【用量】 | 内服:(1)(2)(3)のいずれかで行う (1)1日1回2〜4mg,連日 (2)1日1回6〜10mg,4〜10日間(総量40〜60mg).骨髄機能の回復(通常2〜6週間)を待ち,維持1日2mg (3)1日1回6〜12mg,4〜10日間(総量40〜60mg),骨髄機能の回復(通常2〜6週間)を待ち反復 注射:成人(白血病,悪性リンパ腫,多発性骨髄腫);1日1回60mg/m2,3日間静注.多発性骨髄腫には1日1回100mg/m2,2日間静注も可 小児(白血病,小児固形腫瘍);1日1回70mg/m2,3日間静注 |
【特徴】 | [内服]多発性骨髄腫 [注射]白血病,悪性リンパ腫,多発性骨髄腫,小児固形腫瘍における造血幹細胞移植時の前処置 |
【警告】 | [注射のみ]緊急時に十分措置できる医療施設・造血幹細胞移植に十分な知識をもつ医師のもとで行う.重症感染症合併例には投与禁忌(死亡例報告),必要に応じて無菌管理.投与後は輸血および血液造血因子などの支持療法を行う |
【禁忌】 | [内服のみ]白血球数2000/mm3以下又は血小板数5万/mm3以下.[注射のみ]重症感染症合併例 |
【薬物動態】 | (半減期)(β)静注41〜83分 |
【フコイダンとの 相互作用】 | 無 |
【副作用】 | [重大]ショック,アナフィラキシー様症状.重篤な肝機能障害,黄疸.間質性肺炎,肺線維症.溶血性貧血.[内服]骨髄抑制.[注射]感染症・出血.胃腸障害.心筋症,不整脈[その他][内服]悪心・嘔吐.トランスアミナーゼ上昇.脱毛.発疹,口内炎.発熱・そう痒感.感染誘発など.[注射]皮疹.食欲不振.脱毛など |
抗がん剤にもいろいろな種類がありますが、アルケランという薬はちょっと他の抗がん剤とは使い方が異なる部分があります。
このアルケランは、もともとはほくろのがんでよく知られる黒色腫という皮膚がんの一種のために開発された薬です。けれども、思いのほか成果が出なかったため結局、黒色腫の治療薬にはなれなかったのです。
ただ、そこから研究を重ねているうち、この薬には骨髄を破壊するという特徴があることが分かってきました。そこで、それなら血液のがんの治療に応用できるとされたことから、現在、造血幹細胞移植の前処置に使われています。
造血幹細胞移植とは、骨髄移植のことです。骨髄移植とは、血液のがんである白血病や悪性リンパ腫、多発性骨髄腫や小児固形がんといった病気の治療方法の1つです。
骨髄は、骨の真ん中にあって造血幹細胞という血液を作り出す細胞を有しています。この細胞が、血液となっていくどこかの過程で異変が起こるために、血液ががん化する、これが血液のがんの原因です。
血液のがんの治療は、抗がん剤を使った化学療法でがん細胞をなくしていく治療を最初に行います。ですがその際、多くの抗がん剤を投与せねばならず、そうすると血液中にあるがん細胞はもちろん、造血幹細胞もターゲットになりますのでがん細胞は少なくなりますが、正常な細胞も攻撃してしまうので造血幹細胞も治療によって破壊されてしまうのです。
そこで、新たに正常な造血幹細胞を移植してがんの治癒を目指す、それが造血幹細胞移植です。
完治が難しい血液のがんの場合には造血幹細胞移植を治療の一環としますが、その前に行う抗がん剤での治療で威力を発揮するのが、このアルケランです。
アルケランは、抗がん剤として働きながら前述したように骨髄を破壊しますので、移植を前提に行う抗がん剤治療にはもってこいの薬なのです。
実際、この薬が登場して以来、小児における移植の成果が驚くほど良くなったことは、医療従事者の間ではよく知られている話です。今や、アルケランがないと造血幹細胞移植ができないと言う医師がいるほどです。
使い方は移植の前の3〜5間、指示された量を点滴か内服での投与となります。
ただその際に、強い副作用が出ることがあります。吐き気や嘔吐、下痢や口内炎といった症状の他に、重い感染症を起こすことがありますので、移植を前提としてアルケランを使っている間は無菌室で過ごすことになります。